GOSAT-GW温室効果ガス観測ミッションの概要

温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW: Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle)は、現在の地球環境の把握と、将来の地球温暖化対策への貢献を目的として、温室効果ガス観測ミッション(環境省と国立環境研究所が担当)と水循環変動観測ミッション(JAXAが担当)を担う地球観測衛星で、2023年度に打ち上げ予定です(https://www.satnavi.jaxa.jp/project/gosat_gw/)。このうち、温室効果ガス観測ミッションは、環境省と国立環境研究所(NIES)の二者が共同で行う衛星プロジェクトです。2015年に採択されたパリ協定による1.5℃目標の実現と、2023年から5年ごとに行われるグローバルストックテイク(GST)に向けて、主要な温室効果ガス(GHG)である二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)ならびに大気汚染物質(AP)である二酸化窒素(NO2)について、高い精度及び、世界トップレベルでの空間分解能を有する観測を目指しています。これまでGHG観測については「いぶき」(GOSAT)、「いぶき2号」(GOSAT-2)の2機が打ち上げられており、地球温暖化の影響評価、及び気候変動予測に多大な貢献をもたらしました。GOSAT-GWでは、これまでの開発経験と科学的・技術的知見を活かして、宇宙から大気組成を継続的に観測する技術をさらに発展させ、「温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)」を搭載します。


01. 全大気温室効果ガス(GHG)の月別平均濃度の監視

二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などの温室効果ガス(GHG)は、その大気中寿命が数十年から数百年と長いことから、その削減効果が地球大気全体に変化を及ぼすまでに時間がかかります。そのため、長期間での継続的な観測に基づいた全大気濃度の把握が肝要です。そこでGOSAT-GWでは、GOSAT及びGOSAT-2に引き続き、安定的かつ恒常的なGHGの全球大気濃度監視を第一の目標としています。GOSATでは、2009年から、GOSAT-2では2018年から今日までCO2とCH4の全球大気平均濃度を監視し続けております。観測結果は世界中の研究者によって利用されています。この貴重な研究成果の空白期間を作らないためにも、GOSAT-GWによる観測は重要です。

02. 国別人為起源GHG排出量の検出

2015年に採択されたパリ協定に基づき、同協定で制定した削減目標の達成度について、2023年から5年ごとに評価(グローバルストックテイクという。)を行う予定であり、世界各国が作成・公表するGHG排出量の正確性、透明性および信頼性を向上させるためにも、GOSAT-GWによる検証を実現することが期待されています。2009年6月〜2016年12月までのGOSATの有効データ点数は、東アジアや北米については12,000点以上ありますが、日本においてはわずか410点しかありません。観測点数の少なさは、GHG排出量の逆推定の導出精度に影響するため、日本におけるGOSATデータによる人為起源CO2の推定値は、最大で±75%程度の誤差がありました。GOSAT-GWでは、面的な観測と精密観測モードの最適な運用により、月間で得られるデータ点数が100〜1000倍程度になると試算されており、誤差を±15%程度まで小さくできるため、検証時の正確性、透明性の向上が期待されます。

03. 大規模排出源のモニタリング

GOSAT-GWは、人為起源GHG排出量の推計に影響を及ぼす大規模排出源からのGHG排出を監視することに加え、現在の観測技術で検知されていない未知の排出源を明らかにすることも、その目的の一つです。例えば、永久凍土の融解に伴うGHGの放出は昨今問題視されておりますが、まだその現状把握やモデルによる将来予測には不確実性が多いため、GOSAT-GWはこうしたデータを検証し、将来予測精度の向上などに大きく貢献することが期待されます。また、未知排出源の特定についても、NO2の観測を同時に行うことで実現しようとしています。NO2はGHGと違い大気中の寿命が数時間程度と短いため、排出後の濃度コントラストがはっきり見えるという特徴があります。NO2はCO2と同様に、化石燃料の燃焼が人為起源としては主要なソースであるため、CO2のトレーサー(排出源の特定)として有用です。以上のことから個別発生源から出る排煙の形状(プルーム)の把握をするためにもNO2は有効であり、これは排出量推定の精度に大きく関わります。GOSAT-GWでは、CO2とNO2を同時観測することで、未知排出源の同定のみならず、排出量推定精度の向上も期待されます。